TALES OF THE ABYSS -8番目の譜歌-9
「フローリアン、これは・・・!」
高くノイズが響き、やがてそれは聞こえない程弱くなり、消えた。
そして気が付くと光は段々に弱まりセレニアの白銀だけがぼんやり光るだけになった。
「光が、消えた・・・。」
暫くの沈黙。何かが起こる、と皆はただルークを見ていた。
すっかり光を失ったひとつのシルエットは、ゆっくりと動いた。
「う・・・ん・・・。!!くそ!今の譜歌はっ!?
おい、トゥナっ・・・?あれ・・・?」
重そうに瞼を開き、何度かまばたきをすると、
今度は素早く立ち上がりティアを睨みつけた。
ティアは一瞬息を呑むが、直ぐに嬉しさを顔一杯に滲ませた。
「・・・ルーク・・・ルーク!!良かった。心配したのよ!?」
「え!?違う?ティ、ティア?ご、ごめんっ!・・・一体何が?トゥナは!?」
「落ち着いて下さいルーク。先ず、ここにトゥナは居ません。」
トゥナは居ない事と、ジェイドの冷静な声を聞き、ルーク自身も落ち着いたようだ。
皆の顔を見渡してから、安心したように溜め息をついた。
「・・・ここ、タタル渓谷だよな。一体どうして?」
「混乱するのも無理はありませんわ。
貴方は彼女の譜歌を聞いてから眠り続けていましたのよ。」
「俺がトゥナの譜歌で!?なんでだ!?」
「原因はわかんないんだけど血中音素に異常がなんとかって。」
「心配したよ。お前、丸二日眠ってたんだぜ。」
「ふ、二日ぁ!?なんでそんな!!」
「理由はこっちが聞きたいくらいなんだよねー。
ベルケンドのシュウに聞いてもわかんなかったんだから。」
「え・・・?じゃあどうやって俺を戻す方法・・・。」
「それは、僕が・・・。」
自信無さそうに言いかける。
「フローリアンが?すげぇな!
てっきりありきたりにジェイドかと思ってたよ。」
「ありきたりとはなんですか。・・・フローリアン。
先程、後で話すと言いましたね?今話せますか?」
フローリアンはゆっくりと頷くと、一度アニスに一別をくべてから話しだした。
「僕・・・惑星預言を読んだんだ。」
「そんな!フローリアン!!預言は詠まないでって言ったでしょ!?
しかも惑星預言だなんて。場所教えてないのに!」
初めに反応をしたのはアニス。立ち上がり怒鳴りつける。
しかし怒りだけではないようだ。声も腕も震えている。
怒りなどより心配が爆発しそうなのだろう。
他の者も驚きの表情である。
「ゴメンなさいっ。
・・・僕は初めてダアトに来て、あの広い迷路みたいな中を毎日毎日探検した。
いろんな物見つけた。知らない物ばっかりで、
たまにパメラもびっくりするような物も発見した。」
一言罰が悪そうに謝ると、フローリアンは思い出すように話した。
皆は静かに話に聴き入る。
「だけどある日・・・惑星譜石を見つけたんだ。」
「図書室の隠し通路を知ってしまいましたのね・・・。」
「でも、その頃フローリアンは預言とか譜石とか知らなかったんじゃ・・・。
ましてや詠めるなんて・・・。」
ティアの率直な問にフローリアンは答える。
「うん。知らなかった。でも、意味は良く解らなかったとは言え、詠んだ事はあったでしょ?」
「アブソーブゲートでの時の事か。」
「僕ね、アニス達に会うより前の事は覚えてないんだ。
ううん、会った時も曖昧なくらい。だけど詠んだ事は覚えてるの。」
覚えていない、と少し淋しそうに言う。
風が一際強く吹き、アニスの髪を揺らす。
頬に微かに当たる自分の髪を、少しくすぐったく、もどかしく感じる。
「・・・それにルークの事が書いてあったのね。」
フローリアンを真っ直ぐ見つめながら、確かめるようにティアが言う。
フローリアンは迷いなくゆっくりと頷いた。
「最初は意味わかんなかったけど、勉強して解ったんだ。
僕が勉強を始めたのはそれが理由なんだよ。」
「フローリアン・・・。大丈夫だった?」
話を聞きながらずっと心配していた事だ。
アニスにしてはか細い、小さな声で尋ねた。
倒れなかったか、気分は悪くならなかったか・・・。
様々な心配は尽きないのだろうが、アニスにとっては当然の事かもしれない。
惑星預言を詠み、イオンは死んだのだから。
「えと、それは――」
「すみませんが詮索は後です。皆さん、おかしいと思いませんか?」
フローリアンの答えを遮ってジェイドが口を挟んだ。
しかしアニスを除く皆は、それを不快には思わなかったようだ。
ジェイドの問に同感するように頷く。
アニスとフローリアンはきょとん、とした顔で皆を見回している。
「ああ・・・俺のことが詠まれてる。
預言にはレプリカの事は詠まれてないのに。」
「それに、“両国の戦争”の時点で正しい預言は詠み取れておりませんわ。
沢山預言が外れる中で、ここまで限定した預言が当たるものなんですわね。」
先の旅でも預言に頼った事が何度かあったが、十数年前から、
誤りの預言が急増したのだ。
そう、正しい預言と誤りの預言は半々くらいである。
ましてや預言にレプリカの情報は記述されていない。
「念のため言っておきますが、この預言の結果も偶然ではありません。
何故タタル渓谷なのか裏付ける事が出来ましたよ。」
「その裏付けってのはなんなんだ?ジェイド。」
「セレニアの花ですよ。」
「セレニアの花が、ですか?
確かに夜になって花が一斉に咲いて・・・それで、ルークが。」
あの時の光景を思い出す。
そういえば、花が咲いてからルークの周りが輝き出したのではないか。
「そうか!セレニアの花には微弱だが第七音素音が含まれてる!
それならシュウが言ってた事ともつじつまが合うな。」
「良く気が付きましたね。おそらくトゥナの逆の譜歌には、
体内の第七音素の活動停止効果があったんでしょう。」
「花の第七音素がルークの停止していた血中第七音素と干渉し合って、
活性化を助けたんですのね。」
今更にあの奇跡のような光景に感動をしながら、ナタリアは手を合わせて微笑んだ。
ちら、と辺りを見渡せば綺麗に咲く花畑が視界を白く染める。
「そうか・・・。それに俺、元素が体にあるっつっても、繋ぎ止める
第七音素の割合の方が多すぎんだもんな。」
「ええ。本来元素を持たないルークが被験者と同化したとはいえ、
所詮はレプリカですからねぇ。
ルーク以外の人が逆の譜歌を聞いたところで、何も問題はないと言う事です。」
「な・・・なぁるほどぉ〜!大佐が一緒に居て大丈夫だったのは
そういう事だったんですねー。アニスちゃん安心!」
実は気になっていたんですよー、と少し悪戯口調で言う。
さっきまで沈んでいた事に気が付き、無理をしているように見える。
「では話を戻しますが・・・。
アニス、最近詠まれた預言の内容を知っていますか?」
「知るわけないですよぉ〜!
教団は預言詠み上げの禁止を徹底してますもんっ。」
「この預言は確実に当たっています。
他の預言の真偽を確かめなければいけません。」
ピィ・・・ンと、アニスの表情が凍りつく。
「それって、フローリアンにまた惑星預言を詠めって言うこと!?
惑星預言は他の預言に比べて術者に掛かる負荷が桁違いなんだよ!!
またイオン様と同じように・・・!」
・・・あの人と同じように?
・・・またあんな悲しみを?
・・・見たくないの。
・・・耐えられないの。
・・・あの人が死ぬのは、もう・・・!
頭の中でぐるぐると回る、記憶と恐怖。
「アニス。少し過保護ではありませんか?
言わせてもらいますが。フローリアンは今こうしてここにいますよ?」
「「「「!!」」」」
呆気に取られたとは、正にこんな表情だろうか。
呼吸さえも忘れそうな真実に、皆目を丸くする。
「!!そうだよっ・・・フローリアン・・・劣化・・・してないの?」
「え?劣化って、何が?僕に関係ある話なの?」
「ああっ!いや、な、ななななんでもないよ!」
「??」
フローリアンにはレプリカである真実を伝えていない。
それは、イオンのレプリカである事を気負う必要はないからでもあるし、
ショックを受けて欲しくないからでもある。
勿論フローリアンはレプリカと言う存在は知っている。
ルークやイオンがそうである事も。
自分がレプリカだなどと、夢にも思っていないだろう。
それだけに、知られてしまうことが恐ろしくもあるのだ。
-アトガキ-
うっわ、真面目!!
すんません・・・。
すんごい真面目すぎて見てたら飽きちゃいますよね;;
戦いも無かったし、まぁルークは復帰しましたね★
しかも主人公ルークなのに、
中心がアニスとフローリアンみたいだっΣ( ̄□ ̄;;)!!
もうちょっとノリの良い小説も目指しますね!
